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2007年3月26日 (月)

ジェイムズ・ブリッシュ「地球人よ、故郷に還れ」早川書房世界 SF全集20

 50年代テイスト漂うやりたい放題のスペース・オペラ、ただし語り口はしかめっ面。

 ブリッシュの代表作である宇宙都市シリーズ第三弾。遠い未来、地球上の多くの都市は星間航法スピンデイジーの力を得て宇宙に旅立った。仕事を求めて宇宙をさまよう都市達は、1930年代の大不況で職を求めてさまよったオクラホマ農民に例え、「渡り鳥」(オーキー, Okie)と呼ばれた。そんなオーキーの一つ、ニューヨークと市長ジョン・アマルフィの冒険を描く連作短編。

 ブリッシュはハードSFと言われるけど、これに限ってはむしろバカSFでしょう。いかにも怪しげでマッドなガジェットがてんこもりで、しかもそれを真面目くさったしかめっ面でカマしてる。例えばアマルフィが都市のマネージャーに装置の動作原理を尋ねるシーン。

 「例の質量クロマトグラフ装置というのはどうだね?」
 「…金属--純粋であれば、どんな金属でも構わない--その金属の大きな円柱をとって、その一端を精製分離したいと思う素材に接触させる。それから、その一端殻上のほうへ、円盤状の電場を走らせると、各種の金属を含む素材は抵抗熱によって運ばれ、円柱のそれぞれ異なる部分に析出する…」

 おいおい、そりゃ無茶だろ。何か意味ありげだけど、実はお話の展開には全然関係ない。語数を稼ぐためか、安物のスペースオペラらしさを演出するために、強引に挿入したんだろう。この作品はシリアスに読み解くというより、デタラメさを愛でる寛容な態度で楽しめばいいんじゃないかな。

 その分、スペースオペラに必要な無茶なガジェットは事欠かない。石頭のAIシティ・ファーザース、同じ恒星系内で反目し合う二つの惑星、陰険な警察と狡猾な都市の追跡劇、銀河の裂け目(リフト)を漂う放浪惑星、他の都市を襲う海 賊都市、あまりに無茶で後先考えない惑星プレートの補強(このアイディア自体はかなりおバカで好き)、禿頭の圧政者と無知な民衆、都市の吹きだまりジャングルなど、怪しげでスケールの大きいガジェットや意味不明な固有名詞が満載。ある意味ワイドスクリーン・バロックやサーバーパンクの先取り…ってのはさすがに無理で、むしろパルプSFの香りが強い。ブリッシュの語り口は流麗とは程遠くて高校の化学教師みたいに堅苦しく、その辺のミスマッチが微妙なところ。あまりエンタテイメント向きの作家じゃないようだ。

 お話はヒーローが活躍する勧善懲悪ドラマではなくて、生活のために職を探す都市の悪戦苦闘の記録なのがいじましい。制御装置に真空管を使っているたり、登場人物が計算尺をいじってるあたりも、いかにも50年代。

 以下、宇宙都市シリーズの一覧。

  1. 宇宙零年
  2. 星屑のかなたへ
  3. 地球人よ、故郷に還れ
  4. 時の凱歌

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