SFマガジン2007年5月号
今月は異色作家特集ということで、SF色は薄い。特集で一番面白かったのは、実は小説じゃなくてクリストファー・コンロンの「カリフォルニアの魔術師たち」。TVドラマの創生期に「ミステリー・ゾーン」の台本で活躍したカリフォルニアの若き脚本家たちの連帯とお祭りの日々を綴ったエッセイ。ブラッドベリを後見役とし、チャールズ・ボーモントと中心に、ウイリアム・ノーラン、ジョン・トマーリン、チャド・オリヴァーなどが登場する。今でもこの手のどんちゃん騒ぎがシリコンバレーで続いてるんじゃないかな。なんかカリフォルニアってそんな印象がある。
小説だと「ウイリー・ワシントンの犯罪」が印象深い。無学で貧しいが敬虔なクリスチャンの黒人ウイリー・ワシントンは無実の罪で死刑を宣告されるが…。
「SF挿絵画家の系譜」は真鍋博。星新一の文庫本のカバーで覚えている。シャープで無機的な雰囲気が星新一の作品とうまくマッチしてたのを覚えてる。
梶尾真治の怨讐星域「ハッピーエンド」は地球に残った人たちのお話。主人公は若いカップルなんだが、脇役の老夫婦が主人公を食っちゃってる。OKAGE もそうだけど、最近の梶尾さんは永く寄り添った老夫婦を書くのが巧いなあと思う。
第2回日本SF評論賞は正賞はなし、優秀賞が2作。今回はハインラインの「宇宙の戦士」を論じる「国民の創生--<第三次世界大戦>後における<宇宙の戦士>の再読」を掲載。あれはファシズムと軍国主義礼賛じゃないよ、反共主義を唱えコミュニケーションの重要性を訴える話なんだよ、そんな主張。内容には素直に納得できないけど、面白い文章ではある。ドイツ系移民と軍の関係を掘り起こすくだりはなかなかの迫力。
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