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2007年2月 4日 (日)

松本仁一「カラシニコフ」朝日新聞社

カラシニコフ自動小銃。AKとも呼ばれる。
1948年ソビエト連邦軍が制式採用。軽く小さく頑丈で使いやすい。
分解しても部品はたったの9個。「遊び」が多く弾詰まりしにくい。
多くの国でライセンス生産され、1億丁以上が流通している。
ソマリアでは中古50ドル、新品は80ドルで手に入る。

書名通り、カラシニコフを中心にアフリカの失敗国家の現状のルポ。
権力者は利権漁りに夢中で社会資本整備や治安維持に興味を持たない。
そこに旧ユーゴスラビアやりビアから製造刻印のない安価なAKが大量に流入する。
扱いやすいAKは13歳の少年を一週間で兵士に変える。
武装組織は学校を襲って子どもをさらい麻薬と暴力で兵士に仕立て上げる。
治安は崩壊し個人が武装して自衛するしかない。

設計者カラシニコフ氏のインタビューもある。典型的な叩き上げの技術者。
第二次大戦に従軍しドイツ軍の突撃銃に衝撃をうけ、歩兵銃の必要性を実感する。
「教育のないソビエト兵が使いこなせる銃」という設計思想で、
当時主流の高精度設計から180度転換して「遊び」の多い銃を設計・開発する。
他の分野、例えばトラックを設計したらきっと名車を作っていたと思う。

失敗国家を見分けるには二つの基準で充分と記述がある。

  1. 警察と兵士にちゃんと給与が支払われているか?
  2. 教師に給料を払っているか?

兵が困窮すれば武器を売るか自分で武器を使って稼ぐかだ。
国の将来を考えれば教育に力を入れるはず。
いずれも為政者が何を重要視しているかの指標になる。

最後にソマリランドの現状を紹介し、現実的な対策の一端を見せて終わる。
結局はいかに武装解除を進めるかが肝になる。
ソマリランドでは地区の長老が中心となって武装勢力を説得し銃の回収を進めた。

軽く味見するつもりで読み始めたら止まらなくなって一気に読んでしまった。
朝日新聞社の割りに思想的な偏りも少ない気がする。

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