2020年2月19日 (水)

シャロン・ワインバーガー「DARPA秘史 世界を変えた『戦争の発明家たち』の光と闇」光文社 千葉敏生訳 2

「空軍が費用を持つなら、答えは常に空爆だ」
  ――第10章 占い頼み 1966-1968

「われわれは、失敗するときでも大胆に失敗するのだ」
  ――第10章 占い頼み 1966-1968

 シャロン・ワインバーガー「DARPA秘史 世界を変えた『戦争の発明家たち』の光と闇」光文社 千葉敏生訳 1 から続く。

【どんな本?】

 インターネットの前身であるARPANETの研究で有名なDARPA。正式名称がアメリカ国防高等研究計画局であるように、組織の目的は国防研究である。とはいえ、国防に関わる要素は多く幅広い。実際、ARPA/DARPAの主な目的も、設立以来、二転三転してきた。

 DARPAとは、どんな組織なのか。どんな目的で設立され、どんな研究をしてきて、どんな成果をもたらし、どんな失敗を葬り去ってきたのか。

 合衆国の国防に関わる最も有名な研究機関の歴史と全貌を明らかにする、一般向けの解説書。

【誕生】

 今でこそAPANETが有名だが、1958年の設立当初の主な目的は、なんとロケット開発である。ソ連のスプートニク1号の影響で、ドサクサ紛れに作られたのだ。これ以来、ARPAは大きな特徴がある。

 元々がドサクサ紛れで生まれた組織だけあって、フットワークが軽い。お役所手続きの煩雑さを避け、手っ取り早くヒト・カネ・モノを調達でき、研究・開発を始められるのだ。前の記事にも書いたが、この性質が大成功と大変な失敗をもたらす事となる。

【変転】

 ご存知の通り、現在の合衆国のロケット開発はNASAが率いている。ARPAは仕事を奪われたのだ。

 なら潰れてもよさそうなモンだが、組織ってのは、とにかく生き延びようとする。政府から予算を貰っているなら尚更だ。だもんで、ARPAも目的を変えつつ存続の道を探る。ロケットが駄目なら核実験探知、それで一息ついたらミサイル防衛、そしてベトナム戦争をきっかけとして対反乱作戦へと主力が移ってゆく。

 こういったあたりでは、ホワイトハウス・軍・国防総省・CIA・議会などの意向や、その中での人の動きも、著者は詳しく調べてある。全体として、人の異動が激しいことに気が付く。特に、民間と政府機関を行き来する人が多い。実際、ARPA/DARPAも、1958年の設立から2017年の約60年で、局長は21人だ。任期の平均はたった3年。

 日本のお役所で、これほどトップの人事異動が激しい組織があるんだろうか? いったい、何が違うんだろう?

【ウィリアム・ゴデル】

 前の記事では明るい論調の記事となったが、本書の大きな特徴と読みどころは、むしろダークサイドを明らかにした点にある。何より、冒頭からダークサイドを象徴する人物、ウィリアム・ゴデルにスポットを当ててるし。

 海兵隊員として太平洋戦争で戦い負傷したのち、ドイツのロケット科学者を攫うペーパークリップ作戦(→Wikipedia)に従事、諜報の世界で優れた実績を積み名をあげる。

 NSA(→Wikipedia)を経てARPAに移ったゴデルは、やがてARPAをベトナムへと引きずり込んでゆく。

【対反乱】

 このベトナムにおけるゴデルとARPAの動きが、現在のアフガニスタンやイラクでの米国/米軍の動きと、見事に繋がっているから、泣いていいのか笑っていいのか。

 ゴデル名づけて曰く「アジャイル計画」。その目的は、なるたけ米軍を使わず、現地の軍に戦争を任せること。南ベトナムをアフガニスタンやイラクに置き換えれば、2020年の今でも米軍の目的そのまんまだ。

 ARPAと聞くとハードウェアばかりを思い浮かべるが、社会や心理なども研究している。ベトナム戦争では「なぜ南ベトナムの人々がベトコン(→Wikipedia)になるのか」も調べた結果、その理由は…

「搾取的な政府への怒りや民主主義的な意識」、そしてそうした感覚を煽る共産主義者たちの能力と深くかかわっていた。
  ――第10章 占い頼み 1966-1968

 なんのことはない、要は南ベトナム政府が腐っていて人々から憎まれ嫌われてる、それだけの事だった。戦略や戦術以前に、政策が間違っていたのだ。ところが、この報告を受けたワシントンは…

「単なる否定ではなく、ショックとさえ呼べるもの」であった。
  ――第10章 占い頼み 1966-1968

 ベスト&ブライテストは、邪悪ではなかった。単に、ベトナムについて救いようなく無知だっただけなのだ。ハンロンの剃刀(→Wikipedia)そのまんまだね。

(ウォーレン・)スタークは東南アジアの社会や文化に対する理解不足が、軍やARPAの大きな足かせになっていることに気づいた。
  ――第9章 巨大実験室 1965-

 これ、現在のイラクとアフガニスタンにも、そのまんま当てはまるから切ない。

【象徴】

 そんなARPAのベトナムにおける失敗を象徴する双頭が、戦略村(→Wikipedia)と枯葉剤(→Wikipedia)だろう。枯葉剤も本書は詳しく書いてあるが、戦略村の目的も呆れる。

…ARPAの報告書は、戦略村のことを「政府が人民を正式に統制するための機構」と露骨に表現している。さらに、「全員が全員の顔とその活動を知っていて、よそ者や怪しい活動が一発で見つかってしまう」ような戦略村こそが「効果的」だとも述べている。
  ――第8章 ベトナム炎上 1961-1965

 つまりは南ベトナム政府による人々への支配力を強める事を目的としていたのだ。ちなみに農民の強制移住を使ってソレに成功したのがカンボジアのクメール・ルージュです。何やってんだアメリカ。ベトナムは共産勢力に対する防壁じゃなかったんかい。

【イラン】

 お役所組織のもう一つの特徴は、とにかく大きくなろうとすること。ARPAもベトナムからイランやレバノンに版図を広げてゆく。当時のイランはパフラヴィーによる王政で親米だった。ここでは空軍機のF-15イーグルを抑えて海軍機のF-14トムキャットが選ばれるくだりも楽しいが、そんなイランに合理的な兵器選択法を教え込もうとするあたりも、笑えるやら切ないやら。

国王の仲介者に支払われる賄賂の額が唯一の決定要因だとしたら、戦車の殺傷能力の比較原価など誰が気にするだろう?
  ――第12章 アジャイル計画の隠蔽 1969-1974

 ちなみに武器取引の胡散臭さは今世紀に入っても相変わらず、どころか先進国もヒトゴトじゃない由が「武器ビジネス」に詳しく書いてあります。

【ハードウェア】

 などと明らかな失敗ばかりを挙げたが、失敗とは言い切れない例も多い。というか、対ゲリラ戦って点じゃベトナムはイラクやアフガニスタンと同じだ。そのためか、発想はいいけど当時は技術が追い付いていなかった的なシロモノもアチコチに出てくる。

 その筆頭が人工衛星ディスカバラー(→Wikipedia)で、これは「世界初の偵察衛星」。もっとも当時は写真の電送はできないんで、フィルム回収に手こずるんだけど。

 ここではディスカバラー2号に乗ったネズミの話が笑える。動物虐待防止協会のお怒りを恐れた当局は…

 とかの笑い話はさておき、今世紀に入って実現した案が幾つも載っている。

 「何時間も飛行できる動力グライダー」は無人偵察機そのものだ(「無人暗殺機 ドローンの誕生」)。陸軍用の歩行輸送ロボット「機械のゾウ」はビッグドッグ(→Wikipedia)に進化した。「海洋上の軍事基地の役割を果たす反転可能な艀」はメガフロート(→Wikipedia)だろう。ブレイン=コンピューター・インターフェイスも、今はブレイン・マシン・インターフェース(→Wikipedia、「越境する脳」)で知られている。

 それ以上に失敗も多く載っているが、ARPAの責任とは言い切れない失敗?の例がAR-15、またの名をM16(→Wikipedia)。ゴルゴ13も愛用する合衆国軍ご用達の自動小銃だ。

 もともと小柄な南ベトナム兵向けに設計されたAR-15なんだが、なぜか話は「米軍で採用するか否か」にすりかわり、議論で時間を浪費し「南ベトナム軍の兵士に大量配備されたのは六年後の1968年、テト攻勢(→Wikipedia)のあとだった」。コロコロと情勢が変わる戦争と大人数の合意が必要な議会政治は相性が悪いんです。

【IED】

 もちろん、「小便の臭いでジャングル中のゲリラを見つけよう」とかの失敗した研究もたくさん出てくるが、中でも傑作なのがIED(即席爆発装置)対策。そう、今でもイラクやアフガニスタンで米軍が苦しんでるアレ。

 これに対応したのがペンタゴンの物理学者フレッド・ウィーグナー。彼の言葉が実にいい。軍の高官に対しては「あんたたちは科学を理解していない」。科学者たちには「あんたたちは戦争を理解していない」。そして双方を怒らせましたとさw いや笑い話じゃないんだけど、今でもSEの多くが、発注元には「ITを分かってない」、開発者には「客の業務を分かってない」とか言ってるんでない?

 さて、ベトナムだとジャングルにワイヤーを張って起爆装置に繋げてた。そこでフレッドは新兵器を開発する。ったって、ただの棒だ。これでジャングルを探り、ワイヤーを見つけるのである。ガキに棒を持たせて藪に送り込めば、すぐに実演してくれるだろうw 「一方ロシアは鉛筆を使った」なんてネタもあるが、アメリカだってやる時はやるのだw

【終わりに】

 と、なんとか「パート1」の紹介は終わった。次の記事で完結編となる予定です。

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2020年2月18日 (火)

シャロン・ワインバーガー「DARPA秘史 世界を変えた『戦争の発明家たち』の光と闇」光文社 千葉敏生訳 1

(ソ連がスプートニク1号の打ち上げを成功させた1957年10月5日)アメリカ国民の大半は当初、ビープ音を発信するビーチボールにただ肩をすくめるだけだった。
  ――第2章 パニック 1957-1958

頭のおかしな連中やご都合主義者たちはみんなARPAに押し付けてしまえばいい。
  ――第3章 狂気の科学者 1958

ARAPAのもっとも揺るぎない特徴のひとつは、設立時に意図的に定められたわけではないが、官僚的な手続きを避ける能力だ。
  ――第3章 狂気の科学者 1958

本来、ARPAは危機の真っ只中に生まれた応急的な解決策だった。そして、1959年の終わりが近づくにつれて、その短いながらも激動の生涯を終えようとしていた。
  ――第4章 打倒ソ連 1959-

気づけば、アメリカはベトナム、キューバ、レバノンといった世界各地で小規模な紛争に巻き込まれ、現地の政府に戦い方を助言していた。
  ――第5章 ジャングル戦 1950-1962

枯葉剤を使えば、共産ゲリラから貴重な食糧源であるジャガイモやキャッサバを奪うことができる。つまり、枯葉剤の目的はゲリラたちを餓死させることだったのだ。
  ――第5章 ジャングル戦 1950-1962

ARPANETは1960年代前半のARPAで数々の要因が奇跡的なまでに合致した結果として誕生した。
  ――第7章 非凡な天才 1962-1966

【どんな本?】

 DARPA。アメリカ国防高等研究計画局。インターネットの前身であるARPANETを生み出した事で有名な、アメリカ合衆国の先端的な軍事系研究開発機関…と、多くの人に思われている。

 だが、ARPANETの成功の影には、数多くの失敗したプロジェクトもあれば、SF作家の想像を超える無茶なアイデアも無数にあった。またARPAという組織そのものが、存続を危ぶまれた時期もあれば、枯葉剤などの生臭いプロジェクトに関わった事もある。そもそも設立のきっかけは、ソ連のスプートニク・ショックだった。

 天才の集合体のように思われているDARPAは、どんな経緯で誕生し、どんな道筋を辿ってきたのか。今までに、どんな研究に携わってきたのか。ARPANETの成功の秘訣は何か。

 公開となった膨大な公文書や、多数の元DARPA職員などの取材を元に、合衆国の先端的な軍事技術を支えてきたDARPAの歴史を描く、衝撃のドキュメンタリー。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は The Imagineers of War : The Untold Story of DARPA, the Pentagon Agency That Changed the World, by Sharon Weinberger, 2017。日本語版は2018年9月30日初版第1刷発行。単行本ハードカバー縦一段組み本文約507頁に加え、訳者あとがき5頁。9.5ポイント43字×19行×503頁=410,951字、400字詰め原稿用紙で約1,028枚。文庫なら上下巻の分量。

 文章はこなれていて読みやすい。内容も特に難しくない。さすがに科学研究所の話なので、多少は科学の話も出て来るが、分からなければテキトーに読み飛ばして構わない。ただし、スマートフォンはおろかパソコンすら影も形もない1950年代末から話が始まるので、若い人には当時の様子がピンとこないかも。

【構成は?】

 ほぼ時系列順に話が進むので、できれば頭から読んだ方がいい。ただ、各章は比較的に独立しているので、気になった所だけを拾い読みしてもいいだろう。

  • プロローグ 銃とカネ 1961-
  • パート1 常識破りの兵器開発組織
    • 第1章 知識は力なり 1945-1957
    • 第2章 パニック 1957-1958
    • 第3章 狂気の科学者 1958
    • 第4章 打倒ソ連 1959-
    • 第5章 ジャングル戦 1950-1962
    • 第6章 平凡な天才 1961-1963
    • 第7章 非凡な天才 1962-1966
    • 第8章 ベトナム炎上 1961-1965
    • 第9章 巨大実験室 1965-
    • 第10章 占い頼み 1966-1968
    • 第11章 サル知恵 1964-1967
    • 第12章 アジャイル計画の隠蔽 1969-1974
    • 第13章 ウサギと魔女と指令室 1969-1972
  • パート2 戦争のしもべ
    • 第14章 見えない戦い 1976-1978
    • 第15章 極秘飛行機 1980-1984
    • 第16章 バーチャル戦 1983-2000
    • 第17章 バニラワールド 2001-2003
    • 第18章 空想世界 2004-2008
    • 第19章 ヴォルデモートの復活 2009-2013
  • エピローグ 輝かしい失敗、冴えない成功 2013-
  • 謝辞/注
  • 訳者あとがき

【感想は?】

 今のところ7章までしか読んでいないのだが。

 いやコレ、やたらと面白い。SFファンなら、「第3章 狂気の科学者」は必ず読もう。捧腹絶倒は間違いなしだ。「第6章 平凡な天才」も、SFファンに加え、一般向けの科学解説書が好きな人にも、自信をもってお薦めできる。また、理解のない上司に悩む研究者や開発者なら、「第7章 非凡な天才」に拳を握りしめるだろう。

 「第3章 狂気の科学者」では、物理学者のニコラス・クリストフィロスが大暴れする。この人は昔のSFに出てくるマッド・サイエンティストそのものだ。普通、こういう人の決め台詞は「俺を追放した学会に復讐してやる!」なんだが、この人は学者たちに愛されてる…というか、生暖かい目で見守られているからタチが悪いw

 大酒飲みな上に「何日間もぶっ続けで働き続けられる」バイタリティ、講義させれば聴衆置いてけぼりでアイデアを続々と生み出す回転が速すぎる頭脳。あなたの傍にもいませんか、こんな人。彼が考え出した案の一つが、核ミサイル防衛バリア。高空で核を炸裂させ、周囲の粒子を高エネルギー化し、飛んでくるミサイルを破壊するって発想。

 今でこそ無茶やろと思うが、当時は大まじめに検討され、合衆国海軍などを巻き込んでアーガス計画(→Wikipedia)として実施にこぎつけるからすごい。ちなみに肝心の効果はアレだけど、現場では30分間にわたるオーロラが楽しめたそうです。

 この章では他にも核爆弾推進ロケットのオリオン計画(→Wikipedia)なんてのも出てきて、当時の人の核に対する万能感みたいのが伝わってくる。

 クリストフォロスは第6章 平凡な天才」でも大暴れして、アメリカ大陸横断滑走路とか弾道ミサイル迎撃荷電粒子ビームとか。この荷電粒子ビームの顛末も楽しい。ARPAの肝いりで物理学者を集めたジェイソン・チームで検討したところ、「電力が足りないぞ」→クリストフィロス「五大湖の地下で核核爆発を起こせばいい」「湖の水を15分で排水し、その勢いで発電しよう」。

 計算したら本当にエネルギーが足りると出た…って、そういう問題じゃねえだろw

 この章では、他にも地震学の意外な歴史が明らかになる。なんと、冷戦が地震学を進歩させたのだ。

 時は1961年。ケネディ政権はソ連と核実験禁止条約を結ぼうと考えていた。だが、障害もある。相手が核実験していないと、どうやって確認する?

 21世紀の今なら簡単だ。地震計を調べればいい。だが、当時は核実験の振動と地震の振動が区別できるか否かすら分からなかった。おまけに、核実験はどこで行われるか、見当がつかない。何せアメリカもソ連も広いしねえ。

 そこでARPAは国内で実験を終えるとすぐ、世界中の地震観測所に資金を提供し始める。だけでなく、インドやイランなどにも、地震観測所を無償で提供する。「カネは出すからデータを分けてくれ」ってワケ。これで核実験を突き止められるようになり、核実験禁止条約の障害がクリアできた。つまり…

ソ連との(核実験禁止)条約を締結できたのはARPAの活動の賜物であった。
  ――第6章 平凡な天才 1961-1963

 それに加え、大きなオツリもある。世界的な地震観測網ができたため、大西洋の地震は中央海嶺に沿って起きると証明され、プレート・テクトニクス理論が確認でき、地球科学に大革命が起きた。

地震と核実験を区別するという軍の切実なニーズこそが、地震学を20世紀へと引きずり込んだのだ。
  ――第6章 平凡な天才 1961-1963

 これは当然ながらSFにも波及し、小松左京の「日本沈没」や上田早由里の「深紅の碑文」なんて大傑作へと結実するんだよなあ。

 続く「第7章 非凡な天才」では、ARPANETの誕生が語られる。ここで活躍するのは、ジョゼフ・カール・ロブネット・リックライダー(→Wikipedia)、元は音響心理学者だ。

 当時はコンピュータの黎明期で、計算機学者なんていなかった。みんな、他の学問から移ってきた人ばかりだ。デニス・リッチー(→Wikipedia)だって物理学と応用数学だし。しかも、当時のコンピュータは、パンチカードでデータやプログラムを入れ、ラインプリンタで結果を見る、バッチ処理ばかりだった。そんな環境で、リックライダーの研究テーマは「指揮統制」。

 時はキューバ危機(→Wikipedia)。「(コンピュータの)情報を軍司令官どうしで共有するのには時間がかかった」。そこで彼に与えられたのが、半自動式防空管制組織SAGE。実は当時でも既に時代遅れのシステムだったが、バッチではなく会話式なのが斬新な所。さすがに一人一台じゃなくTSS(→Wikipedia)だけど。

 そんな中、リックライダーは「人々が台所でコンピューター端末を使い、ネットワークでレシピ」を調べるビジョンを思い描く。つまりクックパッドだ。今ならともかく、1960年代前半でそんな発想にたどり着くとは、凄まじい発想力だ。

 ただし、スポンサーの意向は違う。軍や国防長官はコンピュータ科学なんか一顧だにせず、気にしていたのは弾道ミサイル防衛や核実験探知だけだ。というか、「リックライダーが開発を続けられたのは、彼が水面下で活動していたからだ」。ぶっちゃけボス共は、リックライダーが何をやっているか、全く知らなかったのだ。

 わはは。そこの研究者や開発者、ボスにお伺いをたてず、コッソリと何かを研究・開発した事って、あります? いやお伺いしてたらテーマを潰される、っつーか、そもそもボスはテーマを理解できないし。 そういうのって、あるよね、往々にして。

 と、研究者を放し飼いにするとどうなるかの見本が、インターネットなわけです。もっとも、先のクリストフォロスみたいな例もあるけどw

 なんてハッピーな話だけじゃなく、枯葉剤とかにも関わってるんだけど、それは次の記事で。

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2020年2月17日 (月)

SFマガジン編集部編「SFが読みたい!2020年版」早川書房

…ジョージ・R・R・マーティンの名前を見るたびに、「ワイルド・カード」の続きを出せと言いたくなるのは、私だけではないはずだ。
  ――マイ・ベスト5海外篇 細谷正充

 私も同感です、はい。

 今年も出ました年に一度のお祭り本。

 国内篇の上位陣は意外な接戦。対して海外篇はダブルスコア以上であの話題作。いずれもベテランと若手が入り混じって、層の厚さとバラエティの豊かさを感じるのが嬉しい。見逃してたのも多いなあ。柴田勝家「ヒト夜の長い夢」,ラヴィ・ティドハー「黒き微睡の囚人」,マイケル・ベンソン「2001:キューブリック、クラーク」…。

 あ、それと、草上仁「5分間SF」にはひたすら感謝。去年、そんな事を書いてたし。

 「伴名練インタビュウ SFの歴史を継いでいくこと」。既存の名作を巧みに織り込んで美味しく仕上げるマニアックな芸風の人、とばかり思い込んでいたけど、実は「いかにSFパンデミックを引き起こすか」「いかに素人をたぶらかしてSF沼に引きずり込むか」を常日頃から目論んでいる人なのがわかった。いやあ実に頼もしい。

 ところで、「サブジャンル別ベスト10&総括」で「海外文学」はあるのに「日本文学」がないのはなぜ? 既に日本文学はSFの拡散と浸透が済んでるから? いいや具体的な作家としては上田岳弘ぐらいしか知らないけど。

 同じく「サブジャンル別ベスト10&総括」はAI花盛りで、やはりポール・シャーレ「無人の兵団」は読みたい。あとサイモン・ウィンチェスター「精密への果てしなき道」も面白そう。

 「SFコミック」では、「電子書籍のコミックス販売額が紙のそれを上回ったのが2017年」に驚いた。コミックスじゃ、とっくに紙が追い越されてたのか。若い人ほど電子書籍に抵抗がなく、そのため読者層が若いコミックスは動きが先行してる、とかかな? 麦原遼「逆数宇宙」も読みたいし、そろそろ私も考える時がきたのか。

 「このSFを読んでほしい!」。早川書房はやはりピーター・トライアスが出るんですね。期待してます。アトリエ・サードのアルジス・バドリス「無頼の月」は2017年版から予告が続いているような気が…

 「2020年のわたし」。上田早由里のオーシャン・クロニクルには期待してます。高島雄哉「エンタングル:ガール2」ってマジかい!本当ならいいなあ。藤井太洋「マン・カインド」、やっぱり終盤なんだ。海外短編のアンソロジーを編んでくれたら嬉しいけど、新作小説も読みたいし、分身の術を会得するかマシンに精神をアップロードするかして欲しい。

 「2010年代ベストSF30」。チャイナ・ミエヴィルは「都市と都市」「言語都市」どっちが好き? 私は「言語都市」。だってエイリアンが出てくるし。

 「2010年代総括座談会 アイデンティティと多様性の時代に」鏡明×大森望×橋本輝幸。やっぱ「皆勤の徒」の翻訳って無理っぽいと思うよね。ピーター・ワッツに対し「こういう先鋭的でがんばってるSFはやっぱり入れておかないと」って、はい、全くその通り。小野不由美「白銀の墟 玄の月」を「1・2巻で完結だと思ってた」って、そりゃ唖然としただろうなあw 小川一水「天冥の標」を「SFの全体像」ってのは、言えてる。いやまだ最終巻を読んでないけど。SFの美味しい所を全部ブチ込みました、的な雰囲気があるよね。 

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2020年2月14日 (金)

塩之入洋「高血圧の医学 あなたの薬と自己管理」中公新書

本書は、成人の最大疾患群「高血圧」がもついろいろな問題点の解説、危険な合併症を防ぐための対策、高血圧の持続的な治療の必要性、高血圧治療薬の適応と副作用、「快適な生活を過ごす」ために知っておくべき知識などを記述しました。
  ――はじめに

安静時の成人の正常な動脈血圧は、収縮期(最大)血圧が100-130mmHg、拡張期(最小)血圧が50-85mmHgにあります。
  ――第1章 高血圧と血圧測定

【どんな本?】

 30歳以上の日本人のうち、約3300万人、つまり三人に一人が高血圧と思われる。もはや日本の国民病と言ってもいいだろう。

 その高血圧とは、どんな状態か。高血圧の何が悪いのか。高血圧か否かは、どうやって調べるのか。なぜ高血圧になるのか。高血圧を防ぐには、どうすればいいのか。どんな治療法があるのか。高血圧の薬には、どんなものがあるのか。それぞれの薬には、どんな特徴があるのか。薬を服用する際には、どんな事に気を付ければいいのか。

 老化に伴う宿命ともいえる高血圧について、その危険と対策、そして主な薬を中心に語る、医学解説書。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 2002年1月25日発行。新書版で縦一段組み本文約237頁に加え、あとがき2頁。9ポイント41字×16行×237頁=約155,472字、400字詰め原稿用紙で約389枚。文庫なら薄めの一冊分ぐらいの文字量。

 文章の読みやすさと、内容のわかりやすさは、読者による。というか、対象読者を絞り込めていない。

 素人向けだとしたら、文章は硬すぎるし、専門用語を説明抜きで使いすぎる。細かいところでは、「増大する」「減少する」より「増える」「減る」の方が親しみやすい。「過剰な食塩を摂取」を「塩の摂りすぎ」にするなど、工夫してほしい。また「レニン-アンジオテンシン系」とか言われても、素人には見当がつかない。

 特に第4章~第8章は、医師や厚生省の役人など専門家向けの内容だろう。これが本書の半分近くを占めてたりする。

 かと思えば、高血圧の説明に水まき用のホースで例えるなど、素人向けに工夫している所もあるから、評価に困ってしまう。

 日頃から論文や報告書などの専門家向けの文書を書きなれた人が、同じ勢いで書き下ろした、そんな雰囲気の本だ。

【構成は?】

 素人なら、第1章と第2章は、ちゃんと読もう。第3章は軽く流し読みでいい。第4章~第8章は、読み飛ばしてもいいし、自分が当てはまる所だけをつまみ食いしいてもいい。第9章と第10章はちゃんと読もう。

  • はじめに
  • 第1章 高血圧と血圧測定
  • 第2章 高血圧の診断と危険因子
  • 第3章 高血圧治療と降圧剤
  • 第4章 第一選択薬の特性と選択
  • 第5章 高血圧治療薬の薬物相互作用
  • 第6章 合併症を持つ場合の高血圧治療薬の選択と注意
  • 第7章 女性と小児の高血圧
  • 第8章 特殊な高血圧 二次性高血圧など
  • 第9章 高血圧治療 ちょっと気になる疑問
  • 第10章 飲酒と喫煙
  • 付章 低血圧
  • あとがき

【感想は?】

 最近の健康診断で高血圧と言われた。まあ歳だし、とは思うが、やっぱり怖い。何ができるかを知りたくて読んだんだが、これが実にみもフタもない。要は食事と生活習慣を変えろ、だ。

…ライフスタイル改善の共通点は、過剰なカロリー(エネルギー)摂取制限と、適切な運動にあります。
  ――第2章 高血圧の診断と危険因子

 思い当たるフシは、確かにある。体を動かすのは嫌いだし、食事は偏ってる。あまり塩分は摂らないが、甘いものは大好きだ。酒は飲まないが、煙草は吸う。ダメじゃん。

 せめて少しは体を動かすようにしよう。でも走るのは嫌だなあ。筋トレなんて冗談じゃない。なんて思っていたら、実はそれでも構わないのだ。

運動ではとくに有酸素運動(エアロビクス)が勧められ、全身の大きな筋肉を繰り返し時間をかけて動かすものがよいとされます。具体的には、散歩、早歩き、球技、水泳、サイクリング、ダンスなどです。
  ――第9章 高血圧治療 ちょっと気になる疑問

 うん、それならできる。ヲタクの例に漏れず、歩くスピードは速い方だ。なら早歩きで散歩すりゃいいか。

 …で記事が終わっちゃったらアレなので、後は野次馬根性で面白かった所を。まずは、高血圧の原因について。

高血圧は大別して、本態性高血圧(原発性高血圧、体質性高血圧)と二次高血圧にわけられます。本態性高血圧は、現在のところ、真の原因が不明な高血圧で、全体の90%を占めています。
  ――第2章 高血圧の診断と危険因子

 同じ高血圧でも、内臓疾患などによる場合もあるのだ。もっとも大半は「真の原因が不明」の方だけど。つか、わかってないのか。とはいえ、医者の言う「わかってない」は、素人が考える「わかってない」とは違うようだが。たぶん、原因と結果は見当がついているけど、途中でどんなホルモンや酵素がどう関わっているのか、そのメカニズムの一部が明らかになっていない、みたいな意味なんだろう。

 ちなみに子供も高血圧になるとか。ただし、二次高血圧の疑いもあるので、尿タンパクなど他の検査も併せて考えましょう、と。パタリロはコレかな?

 本質的な解決にはなってないんだが、ある程度は医者を誤魔化す方法も書いてあったり。曰く、血圧を測る前の30分はコーヒーを飲まず煙草も吸わない。冬より春や秋の快適な季節は血圧が低くなりやすい。そうか、次の健康診断では←をい

 ゴマカシじゃないけど、喪男にありがちなのが、白衣高血圧。要は血圧を測る時に緊張しちゃって、普段より高い値になっちゃう。うん、きっと俺はコレだわ←をい。まあ、それだけじゃなくて、日頃から仕事や睡眠不足でストレスが溜まってると、血圧も高くなるわけで、健康診断の前日は早く寝ましょう。

 いわゆる代替医療への警告もチラホラと。特に著者が気にしているのが、セイヨウオトギリソウ俗称セント・ジョーンズ・ワート(→Wikipedia)。他の薬との飲み合わせによっては、「深刻な病状の悪化」もあり得るので、「厚生労働省からも警告」が出ている。きっと当時は流行ってたんだろうなあ。

 というか、第5章を流し読みした限り、日頃から飲んでる薬などは、ハッキリと医師に告げておく方が無難だよね、と感じる。薬どうしで効果を強めたり弱めたり、または思わぬ副作用をもたらしたり、イロイロあるのだ。素人が全貌を掴むのはまず無理なので、医師に正確な情報を伝えて判断を任せた方がいい。

 2001年と医学系の本の中だと最新とは言い難いが、基本的な対策は今も大きく変わっちゃいない。つまり酒・煙草・暴飲暴食・塩分を控え、長時間の軽い運動をしましょう、医師には隠さず正直に相談しよう、そんなあたりだろう。とはいえ、わかっちゃいるけどやめられない、なんだよなあ。困ったもんです。

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2020年2月13日 (木)

シルヴァン・ヌーヴェル「巨神降臨 上・下」創元SF文庫 佐田千織訳

ぼくたちはなにもしなかった……死ぬのを待ってたんだ。
  ――上巻p68

自分自身にそれが適用されないかぎり、わたしは彼らの主義を称賛した。
  ――下巻p61

【どんな本?】

 世界各地に出現した巨大ロボットたちは、人々に死を振りまいた。幸いローズ・フランクリンの対策が呼応を奏したのか、巨大ロボットたちは姿を消す。喜ぶのも束の間、人類が手に入れた巨大ロボットのテーミスも姿を消してしまう。操縦者ヴィンセントとエヴァ、そしてローズと地球防衛隊司令官のユージーンを巻き添えにして。

 四人は巨大ロボットの故郷、エッサット・エックトに転送されたのだ。異星において、珍獣とも難民とも客人ともつかぬ、中途半端な立場に置かれた四人は、それぞれの立場で自らの暮らしを始める。

 その頃、地球では。巨大ロボットの引き起こした災厄は、人類に強い恐れを引き起こす。残された唯一の巨大ロボットのラペトゥスを手に入れたアメリカ合衆国は、その強大な軍事力を前面に押し出し、強硬な軍事・外交政策を推し進める。他の諸国も、災厄の犠牲者と生存者の違いを根拠に人びとをランク分けして分断し、特定ランクの者は収容所に押し込めていた。

 そして9年。巨大ロボットのテーミスと共に異星から帰還したヴィンセントらは、テーミスともどもロシアに捕獲されてしまう。テーミスを手に入れたロシアは、その強大な武力で国際社会における存在感を示そうと動き始めるが…

 異星人の遺産である巨大ロボットをテーマとした娯楽アクションSF三部作の完結編。SFマガジン編集部編「SFが読みたい!2020年版」ベストSF2019の海外篇で18位に食い込んだ。

【いつ出たの?分量は?読みやすい?】

 原書は ONLY HUMAN, by Sylvain Neuvel, 2018。日本語版は2019年5月24日初版。文庫本の上下巻で縦一段組み本文約352頁+334頁=約686頁に加え、大野万紀の解説6頁。8ポイント42字×18行×(352頁+334頁)=約518,616字、400字詰め原稿用紙で約1,297枚。文庫本の上下巻としては普通の厚さ。

 文章はこなれていて読みやすい。表紙のイラストで見当がつくように、「古代に異星人が残した巨大ロボットに人間が乗り込んで操縦する」お話だ。だから、科学や背景ではけっこう無茶やってる。そういうのが許せる人向け。

 それ以上に、三部作の完結編なのが重要。そのため、人間関係や設定は、前二作を引きずっている。読むなら、素直に開幕編の「巨神覚醒」から取り掛かろう。

【感想は?】

 いよいよ待望のエイリアンが登場する。のだが…

 人類を遥かに超えるテクノロジーを持つエイリアンである。さぞかし色々と進んでいるんだろう、と思ったら、そうきたか。

 ヲタクなネタと巨大ロボットの魅力で引っぱってきたこのシリーズ、完結編では著者の政治的な姿勢が色濃く出る作品となった。勝手な想像だが、これは著者がカナダのケベック州の出身なのが大きいんだろう。

 カナダは先進国だ。アメリカ合衆国と同じく、移民が作った若い国でもある。ただし自他ともに認める超大国であるアメリカと比べれば、とても小さな国だ。いや国土は広いんだが、人口は合衆国3.28億人に対しカナダ0.37億人、GDPも合衆国20.4兆ドルに対しカナダ1.5兆ドル。大雑把に国の規模は1/10ぐらい。そんなカナダで生まれ育てば、自然と合衆国に対し複雑な感情を抱くだろう。

 軍事・経済・科学そして文化でも、合衆国は世界をリードしている。それはSFも同じだ。だから、合衆国への憧れはある。と同時に、世界の全ての国を相手にして戦争しても勝てるほどの桁外れの軍事力に対しては、どうしたって怯えてしまう。幸い今のところ両国間の関係は良好だが、合衆国が牙をむいたら、どうなることやら。

 そんなカナダの中にあって、ケベックは更に複雑だ。なんたって、公用語がフランス語である(→Wikipedia)。今はやや大人しいが、カナダからの独立を求める動きも強い。だもんで、「合衆国に対抗するため全国民が一丸となって云々」みたいなワケにもいかない。

 そういう複雑な環境で生まれ育ったためか、暴力や権力の圧力や、人びとを差別し分断しようとする動きへの反感が、最終巻であるこの作品に強く出ている。

 なんたって、冒頭から合衆国はリビアの内戦に介入だ。しかも、海兵隊所属となった巨大ロボットのラペトゥスを前面に押し出した、ゴリゴリの脅迫である。まるきしヤクザだw にしても海兵隊ってのは巧いね。何せこの巨大ロボット、守りが硬く武器が強力なのに加え、常識を超えた移動ができる。こういう機動ができるんなら、強襲が専門の海兵隊にピッタリだ。

 そんな合衆国に対し、好敵手を自任するロシアは…。

 いやあ、既刊のアリッサ・パパンドヌ博士もなかなかの役者だけど、この巻で登場するGRU所属のキャサリン・レベデフ少佐が、実にトンガった人で。ロシア人といえば無口でクールなんて常識を鮮やかにひっくり返し、ソープオペラばりにしゃべるしゃべるw しかも、そのお喋りにほとんど中身がないのも凄いw

 所属がGRUだし、ハリウッド映画でアメリカンな振る舞いを学んだんだのかな、なんて思いながら読むと、更に楽しめます。もっとも、稀に覗ける彼女の意図は、やっぱりロシアなんだけどw 「レベデフ少佐のつぶやき」なんてスピンオフがあったら、是非とも読んでみたい。

 などと、物騒なのは軍と諜報機関だけでなく、いずれの国も社会全体がアレな方向に行っちゃってるあたりに、著者の政治性を強く感じるところ。このあたりでは、何かと生臭い事柄を思い浮かべてしまう。今の合衆国の移民排斥傾向に始まり、ユダヤ人の強制収容所もそうだが、太平洋戦争中は日系人も収容所に入れられたんだよなあ。まあ現代の日本もヒトゴトじゃないけど。

 ってな傾向に対し、単に厭うだけでなく、原因にまで思いをはせ、痛い所を突いてくるから憎い。

人は自分が知らないものを恐れます。
  ――上巻p136

彼らは自分たちの信条に居心地よさを感じるためだけに、時間とエネルギーを費やして物事を学ばない方法を探すだろう。
  ――上巻p323

わたしたちはだ……誰かのせいにする必要があるの。
  ――下巻p17

 では進んだテクノロジーを持つエイリアンは、というと、ここでも見事にハシゴを外すんだな、これがw 異星エッサット・エックトを描く場面では、意外としょうもない異星人の状況以上に、不慣れな世界に放り込まれた地球人四人の対比が、なかなか染みる。特に地球を懐かしむユージーンと、新しい世界に飛び込んでいくエヴァの対照が鮮やかだ。

 そのエヴァも、とーちゃんとはギクシャクしてるのは、名前のせいだろうかw

 やはり同じカナダ出身のSF作家ロバート・J・ソウヤーの「ネアンデルタール・パララックス」同様に、サービス満点な娯楽性と共に、著者のリベラルな政治姿勢が強く出た作品だ。だから好みは別れるだろうが、ハマればきっと楽しめる。

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